王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない


「生きたいと、望んでもいいんですか……?」

震える声で聞くと、シド王子は「もちろん。俺はクレアよりも強く望んでる」と言われ……ふっと笑みが溢れた。

「私が罪悪感に潰されそうになったら、抱き締めてくれますか……?」

涙声で言った私に、シド王子の瞳に驚きが広がり……それから柔らかく細められる。

「それは毎日するつもりだから、別のお願いにしてもらわないと」

シド王子が私の手をキュッと握る。

さぁ……と吹き抜けた風に誘われるように空を見上げると、シド王子の瞳と同じような青空が一面に広がっていた。

「クレアの新しい名前、決めないと」

呟かれた言葉に「そうですね」と返す。
〝クレア・ソワール〟という名前はもう消えたのだから。

「名前かー」とガイルも難しそうな声で言い……しばらく沈黙が流れたあと、シド王子が私を見る。

「マーガレットは?」

私が気に入っていた花の名前を言われ驚く。

正直、なにを言われてもしっくりはこないけど……その名前を挙げてくれたシド王子の気持ちを思うと、嬉しさが込み上げた。

「いいかもしれないですね。素敵な名前です」

ふふっと笑顔を返すと、シド王子も同じように笑う。

「悪くはねーけど、長くないか?」
「黙れ」
「ジュリアとかマイケルにも聞いてみてにしようぜ。大事なことだし、みんなで決めたほうがいいだろ」

そう提案するガイルに、シド王子が顔をしかめる。



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