王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない


シオンさんは、本人が言うには王室付きの騎士らしい。

それは、テネーブル王国への攻め入りの様子からなんとなくそうかなとは思っていたけれど……だとしても、結構、位の高い騎士なんだろう。

だって、こうして私に広い部屋や食事を与える権利を持っているってことなんだから……と考え、でも、それを命じたのは王子なんだっけと思い出す。

たしか……シド・エタンセルとか言っていたっけ……と椅子に座ったまま考える。

そのシド王子が本当に命じて私をここに留めているのだとしたら、一体、何が目的なんだろう。

取引の材料として使うにしても、テネーブル王国が事実上崩壊した以上、いくら王族っていっても私にはなんの価値もない。

他の国に売り飛ばすだとかそれくらいしか、今の私に価値は見出せないハズだ。

「売り飛ばす……」

そう考えた途端、背中が冷たくなりブルリと身体が震える。

人身売買が裏で行われているのは、知識のない私でも知っていることだった。
取り締まってはいるけれど、昔からずっとなくならないって母から聞いたことがあったから。

十歳を超えた若い男女が被害に遭いやすいらしい。理由は、若い男性は労働力として使えるからで、若い女性は……。

その先を考え、ブルブルと首を振る。

テネーブル王国に革命派とグランツ王国の騎士が攻め込んできたとき、死ぬ覚悟を決めたっていうのに……ここに連れてこられてからの数日で気が緩んでしまったのか、自分のこれからを考えると恐怖を感じた。



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