王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない
予想もしない提案をされて、返事が一拍遅れてしまった。
口に運ぼうとしていたスプーンを持った手も、止まってしまう。
もちろん、顔を見て話がしたい。無事だとは聞いてるけど、実際に見ない限り完全に安心はできないから。
でも……。
「いいんですか……?」
なんでここまで親切にしてくれるのかがわからなくて、少し疑うような聞き方になってしまった私を、シオンさんが笑う。
「いいよ。誤解されてると嫌だから言っておくけど、俺は別に、クレアをいじめるためにここに連れてきたわけじゃないよ。今はまだ難しいけど、逃げないって俺が判断したらもっと自由だって与えるつもりだし。そのうち、ここが快適だと思ってくれるといいなって思ってる」
敵とまではいかなくても、私はグランツ王国が攻め入った国の王族だ。
周りには極力秘密にされてきたけれど、国王に認知だって一応されてるハズ。
だから、「なんで、そんなによくしてくれるんですか?」と本音をもらすと。
シオンさんは、にっこりと微笑む。
「気に入ったからって言わなかったっけ?」
ここに連れてこられた初日のことが頭をよぎり、そういえばそんなことを言っていたっけと思い出す。
「ああ……冗談だと思ってました」
ポカンとしたまま言うと、シオンさんが「ひどいな」と困り顔で笑う。
「誰にでもキスする男だと思われてたってこと?」
傷ついたように眉を下げたシオンさんに、うなづけず……もごもごと口を動かした。
「ああいうことは、想いを寄せる相手にすることだと、本では読みましたけど……」
たしかにそう書いてあった。
本当にそうなのかは、さすがに恥ずかしくてガイルに聞けなかったけど。