王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない
ジュリアさんは、テーブルクロスを新しいものに交換しながら「あー、えっと……」と迷っているような声を出す。
だから、捕らわれの身で立ち入ったことを聞いてしまったかなと思い「答えにくいようでしたら……」と質問を取り下げようとすると、すぐに「あ、違うんです。考えていたのはこっちの事情なのでお気にせず」と笑顔を向けられた。
『こっちの事情』で言いにくいなら申し訳ないと思ったんだけど……と思い見ていると、うん、とひとつ頷いたジュリアさんが口を開く。
「グランツ王国には王室付きの騎士団が、よっつあるんですけどね。シオンさんは第二騎士団の団長なんです」
「え……団長って、でも、シオンさん若いですよね?」
見た感じ、私よりいくつか年上くらいだと思っていただけに驚く。
「今年二十三……四だったっけな。まぁ、団長としては若いですけど、ここは年齢よりも腕を買うので。シオンさんの場合、人懐っこい性格のおかげで騎士団に属する年長者から反対意見もでなかったし、そういう理由もあるかと」
たしかに、あのキラキラした笑顔でこられたら、年長者からは可愛がられそうだ。
すぐに頭の中にポンと浮かぶシオンさんの笑顔に、ふっと笑みをこぼしながら「たしかにそうですね」と呟く。
するとジュリアさんは、私をじっと見たあと静かに言う。
「さっきの話ですけど。あの人はいつも、誰が相手だって笑顔を絶やさないけど、クレア様相手のときには、その笑顔は作り物じゃないと思いますよ」
予想もしていなかったことを言われ驚いた私を、ジュリアさんが見つめてくる。
まるで感情を探られているように感じ、居心地の悪さに目を伏せ……それから、ゆっくりと口を開いた。