王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない
「綺麗なお顔してるから、男を手玉にとるのなんてお手の物だと思っていたのに……全然そんなことないんですね。驚きました」
「手玉……?」と思わず眉を潜めると、ジュリアさんが「ああ、すみません」と笑う。
手玉って、どういう意味だろう……。
「この国は基本、立場とかでは人を見ないんですが、さすがに王族となるとそういうわけにもいかないでしょう? だから、王妃様や姫は割と性格が毒々しい方が多いんです。せっかくお顔は綺麗なのに」
テネーブル王国の妃や姫たちを思い出し、ああ、と思う。
たしかにそうだったかもしれない。
「だから、クレア様があまりに真面目なことを言うので驚いちゃって。〝私って顔がいいからこんなよくしてもらえるのねー。まぁ当たり前だけど〟って他の姫が片付けそうなことを、そんなに根を詰めて考えてらっしゃるので」
ふふっと笑ったジュリアさんが「でも、考えすぎも美容に悪いですよ」と軽いトーンで言う。
「人生、楽観的に考えるのが一番の長生きの秘訣だってうちの祖父が言ってました」
〝楽観的〟という響きに、母の微笑みが浮かび……ふっと笑みがもれる。
「ありがとうございます」
沈みかけていた気持ちを浮上させてくれたことにお礼を言い頭を下げると、ジュリアさんは「お姫様に頭を下げられたのなんて初めてです」と驚いたように言った。
そのあと「手玉ってなんですか?」と聞いた私に、複雑な顔を浮かべ答えを濁した。