王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない


「クレア! 無事だったか!」

部屋に入り私を見るなり、ガイルが安心したような笑顔を浮かべた。
五日ぶりの再会に、私も胸を撫で下ろしながらガイルに駆け寄る。

場所は、私が与えられている部屋。

シオンさんが言ったように、ジュリアさん立会いのもと、面会は約束通り行われた。

大きくて厚い胸に飛び込むと、怪我したあばらが痛むのか、ガイルはわずかに唸るような声を上げながらも、それを笑みに変え、私の背中を抱き締める。

「ガイル……よかった、元気そうで……」
「おー。正直、ここの飯はテネーブル王国で食ってたもんより旨いし、部屋も広いしで快適だった」

素直な感想にくすくすと笑うと、「でも」とガイルが続ける。

「おまえのことだけが心配だった。だから、本当によかった」

ぎゅうっと、優しくも力強く抱き締めるガイルに、じわっと浮かんでしまった涙を隠すように私も抱き締め返した。


「しかし、そうしてると本当に姫みたいだな」

テーブルの向かいの椅子に座ったガイルが笑う。
塔での生活の時も、いつもガイルは向かいに座っていたからなんだか懐かしかった。

テーブルの上には、ジュリアさんが入れてくれた紅茶が湯気を立てている。

ガイルが『そうしてると』と言ったのは、私のドレスのことだろう。

塔での生活ではドレスではなく、平民の娘が着るような踝までのワンピースを着ていたから、こんなしっかりとしたドレスを着たのは、私もここに来てからが初めてだった。

ふわっとした形のスカートは、動きづらいし足がスース―して未だに落ち着かない。

今日着ているのは、オフショルダーの青いドレス。肩を出したままにするのははしたない気がして、上には透けない素材の白いストールをかけている。

「私も、こんなドレスここに来て初めて着た」

苦笑いをもらすと、ガイルが「だよな」と笑う。


< 45 / 166 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop