王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない
「クレア! 無事だったか!」
部屋に入り私を見るなり、ガイルが安心したような笑顔を浮かべた。
五日ぶりの再会に、私も胸を撫で下ろしながらガイルに駆け寄る。
場所は、私が与えられている部屋。
シオンさんが言ったように、ジュリアさん立会いのもと、面会は約束通り行われた。
大きくて厚い胸に飛び込むと、怪我したあばらが痛むのか、ガイルはわずかに唸るような声を上げながらも、それを笑みに変え、私の背中を抱き締める。
「ガイル……よかった、元気そうで……」
「おー。正直、ここの飯はテネーブル王国で食ってたもんより旨いし、部屋も広いしで快適だった」
素直な感想にくすくすと笑うと、「でも」とガイルが続ける。
「おまえのことだけが心配だった。だから、本当によかった」
ぎゅうっと、優しくも力強く抱き締めるガイルに、じわっと浮かんでしまった涙を隠すように私も抱き締め返した。
「しかし、そうしてると本当に姫みたいだな」
テーブルの向かいの椅子に座ったガイルが笑う。
塔での生活の時も、いつもガイルは向かいに座っていたからなんだか懐かしかった。
テーブルの上には、ジュリアさんが入れてくれた紅茶が湯気を立てている。
ガイルが『そうしてると』と言ったのは、私のドレスのことだろう。
塔での生活ではドレスではなく、平民の娘が着るような踝までのワンピースを着ていたから、こんなしっかりとしたドレスを着たのは、私もここに来てからが初めてだった。
ふわっとした形のスカートは、動きづらいし足がスース―して未だに落ち着かない。
今日着ているのは、オフショルダーの青いドレス。肩を出したままにするのははしたない気がして、上には透けない素材の白いストールをかけている。
「私も、こんなドレスここに来て初めて着た」
苦笑いをもらすと、ガイルが「だよな」と笑う。