王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない


「人間の本性が現れるのは、生死がかかった時だっていいます。それは言葉通りの命をかけた状態でも、立場を得たり失ったりっていう状態でも、人間の本質はそういう欲が関係したときに現れやすい」

確かにそういうものかもしれない、と想像している私を、ジュリアさんがじっと見つめる。
青い瞳がシオンさんと重なって見えた。

「クレア様は、ご自分の身を呈してガイル様を守ろうとした。それこそ、命をかけて。そこに、誰かを想う気持ちを見て驚いて……感動したらしいですよ。本当に他人に対してそこまでの気持ちが抱けるのかって。
そして、自分もこの子を真っ直ぐに想いたいし、想い返されたいって思ったらしいです」

ジュリアさんが最後に嫌そうな顔で「数日前キラキラした顔で延々語られて心底うっとうしかったです」と付け足す。

「身を呈して……」

ジュリアさんの言葉に、塔での出来事を思い出す。

私がガイルを庇いに入ったとき、そういえばシオンさんは驚いた顔をしていたかもしれない。

『アンタは姫で、こいつはただの騎士だろ? 盾にすることはあっても、その逆は初めて見た。姫のアンタが直々にこいつを守らなきゃいけない理由でもあるの?』

そう聞いてきたシオンさんは、心底わからないって顔をしていた。

『守らなきゃいけない理由はなくても、私が、ガイルを守ってはいけない理由なんてないですから』

そして、私がそう答えたのを聞いたあと、なにも言わず剣をしまったのを覚えてる。

でも……あんな事だけで?
そこが納得できなくて黙ると、ジュリアさんがふっと笑った。



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