王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない


「だって……変態って言われて嬉しい人はいないでしょ」
「たしかにそうかもしれないけど。クレアが言ってるのは、俺のどのへん?」

楽しそうに聞かれて、目を逸らしながら「髪の匂いかいできたり、やたらベタベタ触ってきたりですかね」と答える。

シオンさんは「まぁ、我慢できなくて好き勝手しすぎてるところは認めるけど」と前置きしたあとで言う。

「でも、そんなこと言ったら、俺以外の男もみんな変態ってことになると思うよ」
「ガイルはそんなことしませんでした」
「あいつの想い人は剣だろ。剣磨いて煌々とした表情浮かべてるほうが俺には危なく見えるけど」

苦笑いを浮かべながらそう言われてしまえば、そんな気もしてきてぐぐっと黙る。

私は、ガイルくらいしか知ってる人がいないから、他に比べようがない。

シオンさんに他の人はみんなこんなもんだよって言われちゃえば、言い返すこともできない……と分の悪さを感じて話題を変えることにした。

「じゃあ、マッシュルーム残すのはどうかと思います」

食事のとき、シオンさんはマッシュルームが苦手らしく、いつもお皿の端っこに残す。

だからそこをつつくと、すぐに「クレアが苦手だっていうトマトジュース、いつも代わりに飲んであげてるのに」と微笑まれ、また押し黙る結果になってしまった。

私がムッとしているのに、シオンさんは終始楽しそうに、そして余裕そうに笑っていて……この人に口で勝つなんて無理に思えて悔しくなる。

そもそも、論点がずれちゃったけど、シオンさんを傷つけようとして始めたことだったのを思い出し考え直す。

変態って言っても傷つかなかったし……と思い、あ、と思いついた言葉を口にした。



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