王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない
「シオンさん。嫌いです」
考えた末、これなら傷つくに違いないと思い言ったっていうのに。
シオンさんは目を丸くしたあと、「もしかして、それがひどいことのつもり? 逆に嬉しいけど」と笑った。
「嬉しいって……嫌われるのが?」
変態って言われるのも、嫌いって言われるのも何とも思わないどころか嬉しいんじゃもうお手上げだ。
おかしそうに笑う姿に、ムッとした気持ちさえ忘れ聞くと、シオンさんはまだ笑みの残る顔で言う。
「今ので俺を傷つけようとしたなら、ついに俺がクレアを好きだって信じてくれたってことだし」
……言われてから、しまったと思う。
完全に無意識だったけど……言われてみればそういうことになってしまう。
私が〝嫌い〟って言えば傷つくだろうって考えたということは、シオンさんは私に好かれたいと思ってるっていうのが前提になる。
つまり……シオンさんが私を好きだっていうのを、認めたってことになる。
好意的な言葉を向けられたって、そんなの嘘だとか軽い気持ちだとか考えていたのに……いつの間に受け入れていたんだろうと、自分の気持ちなのに不思議になる。
隣から太陽に負けないくらいに注がれる熱い眼差しに居心地が悪くなり、ぷいっと顔を逸らせた。
「こんなに毎日つきまとわれたら、嫌でも信じます。シオンさんだけじゃなくて、ジュリアさんとかガイルまで同じようなこと言ってくるし――」
照れ隠しのあまり、不貞腐れたような態度をとっていると、途中で強く腕を引かれ驚く。
トン、となにかにぶつかる衝撃があり、なにかと思えば……目の前にはシオンさんの肩があって、気付けば抱き締められている体勢だった。
背中に回った腕がぎゅうっとさらに抱き締めてくるから、焦って口を開く。