王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない


「ちょっと、こんなところで……っ」
「ありがとう。クレア」

耳に直接注ぎこむようにして言われた言葉が、抵抗しようとしていた気持ちを包み込み小さくしていく。

たった一言で、声だけで、言いなりになってしまう自分が嫌なのに、もう抵抗する気にならなかった。

ドキドキうるさい心臓に、居心地が悪いのに……嫌じゃない。
シオンさんといると、初めての感情ばかりが浮かんで忙しいのに……それも、嫌じゃない。

「たいしたことじゃありません」

さっきのシオンさんの言葉を真似たことに気付いたのか。

耳元で空気が楽しそうに揺れた。









< 58 / 166 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop