王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない
「ちょっと、こんなところで……っ」
「ありがとう。クレア」
耳に直接注ぎこむようにして言われた言葉が、抵抗しようとしていた気持ちを包み込み小さくしていく。
たった一言で、声だけで、言いなりになってしまう自分が嫌なのに、もう抵抗する気にならなかった。
ドキドキうるさい心臓に、居心地が悪いのに……嫌じゃない。
シオンさんといると、初めての感情ばかりが浮かんで忙しいのに……それも、嫌じゃない。
「たいしたことじゃありません」
さっきのシオンさんの言葉を真似たことに気付いたのか。
耳元で空気が楽しそうに揺れた。