王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない


グランツ王国に連れてこられて二週間。ガイルとの面会は、二日から三日に一度の割合で行われた。

面会は、私が与えられた部屋だから、私が部屋から出られるのはシオンさんが中庭に連れて行ってくれるときだけだ。

中庭での散歩は一日、一時間から二時間ほど。
その間、誰かと廊下や庭で顔を合わせたことはない。

ここは王宮だし、たくさんの人が働くこの場所で誰とも顔を合わせないなんてことがあるだろうか。

そう疑問を募らせていると、その答えをジュリアさんが教えてくれた。

「クレア様がお散歩される数時間、この部屋から中庭までの廊下および、中庭は立ち入り禁止になってるんです。シド王子の命で」
「え……なんでそこまで……」

もしかして、私がここに捕らわれていることを知っているのは限られた人だけなんだろうか。

バレるとマズいから、内緒で私を中庭に……?

いや、でもグランツ王国にとってそこまでする価値は私にはない。なのに、なんで……?

いよいよ売ったり食べたりされるんだろうかと青くなっていたところに、ジュリアさんが言う。

「そんな深く考えなくても大丈夫ですよ。もともと、中庭を使うのなんて国民くらいですから。一時間や二時間、貸し切っても特に文句も出ませんので」
「国民……?」
「テネーブル王国でいうところの〝平民〟ですね。特に位をもたず、自分たちで生計をたて暮らしている方々のことです」

いい呼び方だなと思う。
国の民と書いて、国民……平民よりもずっといい響きに思えた。

でも、中庭があるのは、当たり前だけど王宮内だ。
そこに国民が入ってこられるんだろうか……と考えているとジュリアさんが説明してくれる。


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