王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない
「まぁ、なにも取って食おうってわけじゃないですから。気を楽に……というのも無理かもしれませんが、あまり萎縮されないでください」
気を遣ったように声をかけてくれたジュリアさんが、にこりと笑う。
たしかに……一度は捨てたはずの命だし。どうにでもなれという気持ちで、大きく構えていたほうがよっぽどいいかもしれない。
「それ、シオンさんにも言われました」
クスクスと笑うと、ジュリアさんがホッとしたような顔を浮かべる。
ジュリアさんは、この部屋にきてからというもの、私の様子に常に気を配ってくれる。
食事の進み具合や、顔色、体調をしっかり気にしてくれる。
ここの王や王子がなにを考えているのかはわからないけれど。
私の周りにいる人は、いい人ばかりだ。
よく晴れた空の下を、強い風が吹き抜けていた。
こうして散歩するようになってから一週間、この国はいつでも穏やかな天気だったから、こんなに風が吹いているのは珍しい。
でも、肌で直接感じる風は初めてだから、それも楽しかった。
ただ、花たちはたくさん揺らされてしまって可哀想だなぁと思う。
「クレア、少し肌寒いしそろそろ中に入る?」
心配そうに聞いてくるシオンさんに「大丈夫です」と首を振る。
「風をこんなに受けたのは初めてだから、ドキドキします」
ふふっと笑うと、シオンさんは仕方ないなって顔で笑ってから、私の頭をポンと撫でる。