王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない


「ここの偉いヤツらは、俺たちをどうするつもりなんだろうな。まさか一生、幽閉しておく気でもないだろ」
「……うん」
「ってなると、いずれ今の状況は変わる。……どういう方向にかはわかんねーけど」

難しい顔をして、前髪をくしゃっとかきあげたガイルをじっと見つめた。

テネーブル王国の他の王族がどうなったのかはわからない。
聞けば教えてくれるのかもしれないけれど、残酷な話になるかもしれないし、わざわざ聞こうとは思わない。

でも、ここに捕えられているのは、私とガイルだけらしい。

国王や王妃ならまだしも、私やガイルをここに生きたまま幽閉する理由はなんだろう。

ここに連れてこられてからずっと離れない疑問を考えながら紅茶のカップに口をつけると、これまで傍観していたジュリアさんが言う。

「まぁ、もう二十日ですからね。よからぬ想像をしてしまっても当然です」

そう、ため息をついたジュリアさんが続ける。

「簡単に言うと、今、グランツ王国の国王が留守なんです。この国の南側に大きな砦を作る計画があってその視察や他の公務のため、帰還するのはまだ十日ほど先の予定です」

「つまり、国王の指示待ちってことか?」と聞いたガイルに、ジュリアさんがうなづく。

「勝手なことはできませんから」
「でも、それって矛盾してねーか? テネーブル王国の王座強奪は国王ではなくシド王子が指揮してたことなんだろ? だったら、俺たちのことだってシド王子が決めればいいだろ」

たしかに、ガイルの言う通りだった。
シド王子が指揮していた以上、そこに関わるすべてのことをシド王子が任されている状態だ。

現に、テネーブル王国の他の王族には、なんらかの処分を下しているハズ。
なのに、なんで私たちの処分だけ国王に指示をあおがなければならないんだろう。

疑問に思いながら見ていると、ジュリアさんがすっと目を逸らす。




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