王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない


「これ以上は、私の口からはちょっと」

それでも、ガイルと一緒になってじーっと見続けていると、耐え切れなくなった様子のジュリアさんがはぁーっと声に出して息をもらした。

「とにかく、悪い方向にはたぶん進みませんし、呑気に過ごしてください。だいたい、シオンさん見てればわかるでしょう。あれだけ毎日クレアクレア言ってるのにある日いきなりクレア様たちを厳しく処分するはずがないでしょ」

面倒くさそうに言ったジュリアさんに、ガイルが「まぁなぁ」と後ろ頭をかきながら言う。

「ここの騎士団長がどれだけの権限を持ってるかは知らねーけど、あれ見てる限りはクレアが悲しがることはしなそうではある。……それにしてもおまえ、あんな態度でこられてて絆されたりしねーの?」

急に疑問を向けられ「絆される……?」と返すと、ガイルがテーブルに身を乗り出す。

「顔も身体も剣の腕もいい男にあれだけ駄々漏れの好意向けられてたら、まんざらでもない気になるだろ?って話。そもそもおまえ、母性本能みたいなのが強いからああいうヤツ放っておけないだろ」
「母性本能……」

たしかに、放っておけないような気持ちになるときはある。

あんまり冷たく突き放すとすぐにシュンとしてしまうから、そうなると優しい言葉をかけなきゃって思うし、なんでもない話なのに嬉しそうにしているシオンさんを見ると私も嬉しくもなる。

でも、それって母性本能からくるものだったんだろうか。

その前に、シオンさんは決して、そんな弱い部分だけではないと思う。強くて頼りになる部分だってたくさんある。

……それを言ったら、ガイルにまた絆されただのなんだのとからかわれる気がしたから口には出さなかったけれど。

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