王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない
「こ、こういうこと、普通にしないでください……っ」
顔が一気に熱を持ったのが自分でわかったから、それを隠すようにうつむいて抗議する。
するとすぐに腕を引かれ、今度は抱き寄せられるから頭の中が混乱しすぎて声も出せなくなってしまった。
ドキドキする胸が緊張をあおるから、ただパニックになってどうしたらいいのかわからなくなっていたとき、シオンさんが言う。
「俺は正直、テネーブル王国の国王が憎かった」
その、重みのある声と言葉に……混乱していた頭がすっと温度を下げたのを感じた。
私の頭を抱き抱えたシオンさんの声が、とても近い位置から耳に響く。
「平民にだけツラい思いをさせて自分はなにもせず高座で笑ってるなんて、王のすることじゃない。だから話を聞いたとき許せないと思ったし、テネーブル王国の平民のためにも今の王族を滅ぼさなきゃいけないって、革命派と必死に計画まで練った」
私を抱き締める腕に力がこもり、視線だけでもとシオンさんを見ようとしたけれど、視界の端でシオンさんの後ろ髪を見ることしかできなかった。
今、彼がどんな顔をしているのかが見たくて、シオンさんの腕に手で触れたとき。
「なのに……その国王がいなければ、クレアは生まれなかったんだって考えると、頭がこんがらがってわからなくなる。クレアの父親も、母親との思い出の場所も、俺がなくしたのかって考えると……わからなくなる」
苦しそうな声で「結局俺も自分の気に入らないことを排除したいってだけの、暴君なのかもしれない」と言われ……シオンさんの腕をぎゅっと掴んだ。