王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない


――事件が起きたのは、マーガレットってお花の名前を教えてもらった三日後だった。


グランツ王国の天気は、あまり崩れることはないのだろうか。
それはそれで作物の成長に影響が出てきてしまいそうだけど……。

そう考え心配になるほど、私がこの国に来てから晴れが続いていたから、今日の曇り空は珍しい。

「グランツ王国には晴れの日しかないのかなって思ってました」
「そんなことないよ。雨も降るし、長いときは一週間雨が続いたこともある。ただ、たまたま晴れが続いているだけだよ」

曇り空を見上げながら言った私に、シオンさんはおかしそうに笑って答えた。

肌にあたる風が、いつもとは違い、湿気を含んでいるように感じる。こんな風はここに来て初めてだから嬉しい。

今日、新しく教えてもらった花は、ダリア。

とても大きく立体的に咲く花で、紫の色合いが綺麗だ。

花びらの先に行くほど色が薄く白くなる。
そのグラデーションは自然のものとは思えないほど美しく、眺めていて飽きない。

シオンさんは、グラデーションがなく一色のものもあると教えてくれた。

元からそこまで花に詳しいわけではなさそうだから、たぶん、私に教えるために調べてくれたのかもしれない。



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