王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない
「ガイルさぁ、どうにかしてくれない? あいつのタラシっぷりすごいんだけど」
見れば、しゃがんだシオンさんがげんなりした顔でダリアを見ていた。
「タラシ?」
「すぐ人の懐に入り込むんだよ。おかげであいつの見張りにした新米兵士がずいぶん打ち解けちゃったから問題が起きたら困ると思って、別のやつにしたんだよ。正直、態度が反抗的で手に余ってたやつ。
そしたら、そいつまでいつの間にかすっかりあいつを慕っちゃって……他の騎士団長が面目丸つぶれで苦い顔してる。まぁ、俺もだけど」
はぁ、とため息を落としながら言われた言葉に、ふふっと笑みをこぼす。
ガイルらしいなぁと。
「ガイルは面倒見がいいから、すぐ好かれるんです。器も大きいし。剣術の腕はあるのにそれをひけらかしたりもしない。若い兵士が懐くのもわかります」
「俺だって面倒見はいいんだけどなぁ……」
ぼそっと言われ、たしかにそうかも……と考える。
寒くないかを心配してストールを取りに行ってくれたり、食事を残すとどこか悪いのかってうっとうしいくらいに聞いてきたり。
私がすずらんの香りが好きだと言ったその日の夜から、湯あみの石鹸がすずらんの香りに変わっていたり。
……なんだか少し違う気がするけれど。
「シオンさんのは、過保護というか、ちょっとガイルとは違うと思います……」
種類が違うし、ガイルはもっと放任だ。
そう思い言うと、困り顔で笑われた。