王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない
「俺が保障してやる。ああ、でも、俺の目に適うヤツにしろよ。一応、俺はおまえの保護者のつもりでいるから、もし変な男連れて来たら叩き斬るからな」
「……剣持って物騒なこと言わないで」
「おまえは、こうって決めたら一直線なところがあるからな。恋は盲目っていう言葉があるくらいだし、目先が狂ってたら俺が修正してやらねーとダメだ」
うんうん、と自分で言って頷いているガイルに「やっぱり恋愛なんてできない気がする……」と呆れたとき、急に外からバンッという大きな音が聞こえた。
続いて聞こえてきたのは、わぁ……!っという大人数の声が合わさったような大きな音だったけど……その声が大地を揺らすほどに大きく響き、思わず「なに……?」という声がもれていた。
一瞬にして変わった雰囲気に、ガイルは立ち上がり「様子を見てくる。おまえはここにいろよ」と言い、塔から下りる。
その後ろ姿に緊張が走っていることに気付き、「うん」という返事が遅れてしまった。
持っていた針を針山に戻し、布をテーブルに置いてからゆっくりと立ち上がる。
そして、王宮の城壁が見える側の窓に近づき覗いて……驚いた。
王宮が建つ王族の敷地の周りは、厚く高い城壁で四方を覆われている。
その真ん中に王宮と言われる大きなお城があり、王族が暮らしているのはそこだ。
この塔があるのは、城壁の中とは言えど敷地の一番端っこだから、王宮まで数百メートルっていう距離がある。
「なに、これ……」
窓の外には、その、数百メートル先にある王宮に……たくさんの人たちが流れ込んでいる光景が広がっていた。
剣や松明(たいまつ)を掲げている人も見えることから、これが平和な催しではないことは一目瞭然だった。
目を凝らすと、ほとんどの人たちは武装していない。つまり、平民だ。
その中にポツポツと、藍色と銀色の武装をした騎士の姿が確認できた。