王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない


「あなたたちは、テネーブル王国の国王が敷いた、弱い立場の者が虐げられる体制が許せなくて革命を起こしたんでしょう? なのに、自分たちがその国王と同じことをしてどうするんですか……。せっかく国から解放されたのに……」

真剣に訴えると、男の人たちは黙り、辺りがシン……と静まり返る。

正門前で行われている暴動の声が遠くに聞こえる中、ただ睨み合っていると、そのうちに男の人がいぶかしげに口を開いた。

「もしかして、隠してた姫って、こいつじゃないか?」

バレるのは、部屋から飛び出したときから覚悟の上だった。
それでも、男の人たちの眼差しが変わった途端、ギクリと心臓が嫌な音を立てる。

キュッと唇を引き結んでいると、疑いが核心に変わったのが男の人の瞳でわかった。

「そうだよ、だって高そうなドレス着てるし……」
「こいつが、今まで俺たちを苦しめてきたあの国王の娘だ! 王族の生き残りだっ」

私がテネーブル王国の王族だと確信し、顔つきを変えた男の人たちが「おまえのせいで……!」「よくも俺たちに顔向けができたもんだなっ」と、次々にひどい罵声を浴びせる。

こんな風にすごい剣幕で男の人に怒鳴られるのなんて初めてで、気をしっかり持たなきゃと思うのに身体が震えてしまう。

いつの間には雨が降りだし、地面を濡らしていた。

あんなに身体で受けてみたいと思っていた雨粒が次々に落ちてくる。
動揺からなのか、ポツポツという音だけが聞こえ、男の人たちの声がどこか遠く聞こえる。

まるで水中にでもいるように、ぼんやりした男の人たちの怒鳴り声に歯を震わせていたとき。

私の後ろにいたはずの男の子が、私の前に立ち両手を広げた。




< 96 / 166 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop