久遠の絆
「だがその時は失敗に終わった」


そして時を経て、世界は再び救い手を得たというのか。


「神も……宇宙自身も壊れてしまうのは嫌らしい。だから神秘なる力を持って、救い手が生み出される。宇宙とは、かくも不思議なものなのだ」


その部屋を、静寂が包んだ。


二人に考える時間を与えるように、ナイルターシャが口を閉じたのだ。








蘭は巫女姫の言った言葉をもう一度頭の中で整理した。


宇宙は泡状。


そのひとつが蘭のいる世界。


そして次元の壁をはさんで隣り合うのが、この世界。


その世界にいる巫女姫が、どこかにいる救い手の気配を感じ取り、それが今回は蘭だった。


宇宙は壊れかけていて、それを救うのが蘭の役目……。








(だめだ。やっぱりわかんない。そもそもただの人間のわたしが、どうやって宇宙を救うっていうんだ?)


「お悩みのようだね」


笑いを含んだその声に、蘭はかっとなった。


それは理解に苦しむ自分に苛立っているせいもあったのだ。


「当ったり前です!悩まないはずがないじゃないですか?!
す、救い手なんかになったって、わたし責任持てませんっ!!」


するとナイルターシャは目をスッと細め、蘭を見据えた。


言葉が過ぎたかと怯える蘭。


しかし相手は思いのほか優しい声音で囁くように言った。


「今までのあんたは辛いことばかりだったね」


「え……どうして、それを……」

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