久遠の絆
「辛くて苦しくて、何度も生を投げ出したくなったはずだ。けれど、そうはしなかった。

どんなに壊れそうになっても、あんたは何とか生きてきた。純粋な心を失わないように頑張ってきた。

特別な力が要るんじゃないんだ。

救い手に必要なのは、生きようとする意思なんだよ。私が書いた本にもあったろう?

宇宙とは、生命。生命の輝きがある限り、宇宙の崩壊はきっと止められるとわたしは信じている。

だからあんたも信じるんだ。自分の生きようとする命の力を……」


蘭の目から涙が溢れた。


会って間もない人に『頑張ってきた』と言われ、それまで溜めてきた心の傷が少しばかり減じたような気がした。


『宇宙とは生命』?


抽象的な話になれば、まだまだ訳のわからない蘭だったが、この時初めて自分の救い手としての運命に向き合う気になったのかもしれない。



「難しく考えることはないんだ。あんたはあんたらしくしていれば、それでいい」
蘭を励ますように言って、ナイルターシャはにっこりと笑った。


「はい……」


「ナイルターシャさま」


カイルが頷く蘭に代わるように口を開いた。


「なんだい?」


「先程から巫女姫と仰る時に、まるで他の人のことのように仰っておられたように思うのですが……」


「ふふふ……だから私はあんたが好きだよ。その聡明さは大事にするんだね。
そう、あんたの言ってることは当たっている。私もいつ言おうかと思ってたんだがねえ」



次に彼女が何を言うのかと、二人は身構えた。


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