久遠の絆
言葉の端々から、彼女の妹を思う気持ちが溢れ出して胸を打った。
病弱な妹のために、この人はこの閉鎖的な空間で一人、ずっと長い時を耐えてきたというのだろうか。
なんという精神力だろう。
こんな人なのだから、年端の行かぬ若造を計に嵌めることなど容易いことだったはずだ。
「では、あなたの本当の名は?」
ナイルターシャとして生きてきた女性はくすりと笑い、
「私はこれからもナイルターシャでいなくちゃならないからね。あんまり教えたくはないんだが……」
あんた達は特別だ。
そう言って彼女は自身の真名を告げたのだった。
シェイルナータ
それが彼女の本当の名前。
しばらく後にカイルは、ナイルターシャに確かにそう言う名の姉がいたと、何かの本で読んだことを思い出す。
巫女姫の傍らで、常に影から妹を支えていたという姉。
それは時を経てなお、変わらぬ彼女の姿勢だったのだ。
「さあ、言うべきことは全部言っただろうかねえ」
シェイルナータは少し疲れたように溜息混じりに言って、ぶどう酒をちびちび舐めている。
「あの……」
そんな彼女に、ためらいがちに蘭が声を掛けた。
「なんだい?」
まだ何か?とでも言いたそうに横目で睨んでいる。
そんな風にすごまれると、まだびくびくとしてしまうのは仕方のないことだろう。
なんと言っても蘭は彼女に死にそうな目に遭わされているのだから。
「あのですね、わたし、これからどうしたらいいんですか?」
するとシェイルナータは「あたた」と言って額を押さえた。
病弱な妹のために、この人はこの閉鎖的な空間で一人、ずっと長い時を耐えてきたというのだろうか。
なんという精神力だろう。
こんな人なのだから、年端の行かぬ若造を計に嵌めることなど容易いことだったはずだ。
「では、あなたの本当の名は?」
ナイルターシャとして生きてきた女性はくすりと笑い、
「私はこれからもナイルターシャでいなくちゃならないからね。あんまり教えたくはないんだが……」
あんた達は特別だ。
そう言って彼女は自身の真名を告げたのだった。
シェイルナータ
それが彼女の本当の名前。
しばらく後にカイルは、ナイルターシャに確かにそう言う名の姉がいたと、何かの本で読んだことを思い出す。
巫女姫の傍らで、常に影から妹を支えていたという姉。
それは時を経てなお、変わらぬ彼女の姿勢だったのだ。
「さあ、言うべきことは全部言っただろうかねえ」
シェイルナータは少し疲れたように溜息混じりに言って、ぶどう酒をちびちび舐めている。
「あの……」
そんな彼女に、ためらいがちに蘭が声を掛けた。
「なんだい?」
まだ何か?とでも言いたそうに横目で睨んでいる。
そんな風にすごまれると、まだびくびくとしてしまうのは仕方のないことだろう。
なんと言っても蘭は彼女に死にそうな目に遭わされているのだから。
「あのですね、わたし、これからどうしたらいいんですか?」
するとシェイルナータは「あたた」と言って額を押さえた。