久遠の絆
「へえ~、そうなのかい。だったら元帥殿の片思いってとこかな?」


「「 カタオモイ?! 」」


奇しくも二人同時に、かなり片言で叫んでいた。


「ナイルターシャさま……いや、シェイルナータさま、ですか」


「どっちでも構わんよ」


「そうやって我々の反応を見て楽しむのは、もうやめていただきたいのですが。話がややこしくなる」


「おや、もしかして怒ったのかい?」


「怒ってなどおりません。ただ事実と違うことを仰ると、あなたさまが思われるよりももっと他者に多大な影響を及ぼすということを知って頂きたいのです」


「ふ~ん」


「シェイルナータさま?」


ねめつけるように見る彼女を、カイルは呆れたように見返している。


そんな二人を目の端に映しながら、蘭は思った。


(そうか、カイルはきっとわたしなんかよりもずっと冷静で、大人なんだ)


片思いと言われて、それだけで意味もなくうろたえてしまった自分はあんまり子供じみている。


(カイルがわたしを好きになるなんて絶対ありえないのに!)


彼にとって蘭は、言わば使いやすい捨て駒だ。


この世界を救ってくれるなら誰でもいい。


蘭がダメなら、またあちらの世界から連れてくればいいだけのことなのだから。


(そんなわたしを、カイルが好きになるわけない……)


そんなこと分かっていたのに、いざ確信するとなんだか心が重たい。


しかしだからと言って、自分がカイルを好きなのかと問われれば、それも「はい」とは答えられない。


複雑な乙女心、というべきか。


恋が生まれるには時間が少なすぎ、また、いろいろなことが起こり過ぎている。


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