久遠の絆
次の瞬間にはその優しそうな瞳に鋭い光を浮かべ声音を低くしたので、その変わりように蘭は戸惑った。


「俺に付いて来てくれる?」


囁くように、けれど有無を言わせぬ響きがあった。


「ある人が、君を待っている」


「ある人?」


茂みの向こうが騒がしい。


それが気になって、蘭はマトから顔を逸らし後ろを振り返った。


同盟軍の兵士達の動きが慌しくなっているのだ。


また攻撃を始めるつもりなのだろうか。


きゅっと胸の前で結んだ手に力を入れた。


「奴らも探してるんだ」


「え?」


もう一度マトを見た。


彼は自分よりも知っている?


何を?


「何を……探しているの?」


「君が探しているものを」


彼が嘘を付いているとは思えなかった。


嘘を付く理由もない。


では、彼はいったい……。


「あなたは誰なの?」


蘭の搾り出すような声に、彼はふっとその表情を和らげた。


「俺はサウル村のマトだよ。だけどちょっとだけ、君の事情に通じているんだ。……ナイルターシャさま」


心臓がドクリと波打った。


息苦しさを感じて、深呼吸してみる。


彼の口からまさかその名が出てくるとは思わなかった。
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