久遠の絆
淡い光に目が慣れると、見えたのは生活空間だった。


椅子や机、炊事場など。


(まるでシェイルナータさまのお家みたい)


必要最低限のものしかない簡素な部屋だった。


「ここは、ナイルターシャさまのお住まいだよ」


マトが部屋の中を見回しながら言った。


「ここが……」


「あの人は村にも家を持っていたけど、決まって夜になるとここに戻って来ていた。
俺があの人が他とは違うって分かったのも、後をつけたからなんだけどね」


「……」


「この岩の不思議を最初に見たときには、さっきの君と同じ顔をしてたと思うけど、ね。
まだ十にも満たないガキだった俺は、案外すんなりと受け入れることが出来た。ばあちゃんがこの空間にいなくては長生きできないんだってことを」


ああ、ではやはり、シェイルナータと同じなのだ。


ナイルターシャも。


双子の妹も。


ただ外見が違うというだけで。


この空間の力を貰いながら生き永らえているのだ。


「そのナイルターシャさまは?」


その問いに、初めてマトは柔和な顔を歪め、辛そうな表情になって俯いた。


「マト?」


けれど彼はつっと顔を上げると、内心の感情を抑えるように微笑んだ。


そして。


「これを君に渡して欲しいって」


そう言って机の引き出しから取り出したのは、ビロードの張られた小箱だった。


「これは?」


「開けてみて。君じゃないと開けられないってことだから」

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