久遠の絆
今度もマトは答えようとはせずに、

「同盟軍が去るまでランはここにいて。見つかれば、どんな酷いことをされるか分からないから」

と言って話をそこで打ち切ろうとしたのだ。


「待って、マト。ナイルターシャさまは?教えてよ!」


蘭の胸に言い知れぬ不安が広がっていく。


まさか……。


(死……?)


自分の思考がとんでもない方向に向いてしまって蘭は焦った。


(そんなことあるはずないじゃない。ナイルターシャさまとシェイルナータさまは繋がってるんだから)


そう。


ナイルターシャに何かあれば、シェイルナータも無事では済まないのだ。


(でも、シェイルナータさまは元気でおられるわ)


だからナイルターシャも無事であるということだ。


けれどマトの苦しげな表情が変わることはなかった。


(マトはきっとひとりで抱えて苦しんでいる)


それほどにナイルターシャは彼にとって大切な存在なのだろう。


(でも……)


彼だけが抱えていていい問題ではなかった。


蘭も“巫女姫”に会い、示唆を与えて貰わなくてはならないからだ。


でなくては救い手としてこれからどうすればよいのか分からない。


そう言うと、マトは考え込んだみたいだった。


彼がそこまで言うのを躊躇うのにはどういった理由があるのか、考えてみても蘭には分からなかった。


「マト」


あんまり彼が黙り込んでいるので蘭は不安になって声を掛けた。


するとそれがきっかけになったのか、マトは思い切ったように顔を上げ告げたのだった。

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