久遠の絆
「ナイルターシャさまは、さっきの襲撃の時に同盟軍に囚われてしまったんだ」


「えっ?!」


「君があの滝のある場所に来た時、ナイルターシャさまは救い手が近付いていることにほっとされていたよ」


「ちょっと待って。わたしが滝に来た時って、どうしてそんなこと知ってるの?」


「それは……あの空間はナイルターシャさまの結界なんだよ。救い手があの場所を見つけると、ばあちゃんが分かるようになってるんだってさ」


思わず親しげに「ばあちゃん」と呼んでしまったことに慌てて、マトは照れたようにはにかんだ。


恐らく彼らはそのような関係だったのだろう。


ずっと祖母と孫のような親しさで過ごしてきたのに違いない。


今は体面を重んじてナイルターシャさまなんて呼んでいるに過ぎないのだ。


「いっつも呼んでるように言ってくれたらいいんだよ」


蘭がそう言うと、マトは小さく頷いて

「それでさ」

と気持ちを切り替えるように咳払いした。


「結界に救い手が入ったってことを感じたばあちゃんは、俺にその指輪のことを教えてくれたんだ。絶対何があっても君に渡すようにって。
……その話をして俺が村のばあちゃんの家を出た直後兵士が押し入ってきて、俺は……ばあちゃんを守ることが出来なかったんだ……」


悔しそうに唇を噛むマトに、蘭はなんと声を掛けていいのか分からなかった。


「きっとばあちゃんはこうなることを分かっていて、俺に君のことを話したんだと思う。君がここへ来ることも、同盟軍の襲撃も、全部知っていたんだよ」


「だったら、助けに行かなきゃ」


「だめだ」


「どうして?!」


「君は君のやるべきことがあるだろう。なんのためにその指輪を嵌めたんだ?」


「……でも、それでも、このままじゃいけないよ。ナイルターシャさまを助けることが出来なくて、なんで世界が救えるの?ここでナイルターシャさまのことを諦めて、ほんとに救い手が務まるの?
わたしはイヤだよ。大事な人を救えなくて、それなのに救い手なんて呼ばれるの、絶対イヤだ!」

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