久遠の絆
蘭とマトは再びジャングルの中を走っていた。


「同盟軍は、ナイルターシャさまをナイルターシャさまと知って捕らえたの?」


蘭は走りながら、浮かんだ疑問を口にしていた。


「わからない。でもきっと知っていたから、こんな小さい村をわざわざ襲ったんじゃないかな」


きっとそうだろうと思った。


しかし伝説の巫女姫が生きているということは、ダンドラークの神殿の機密事項であり、神官以外は知らないことではなかったか。


まして本物のナイルターシャがここにいるなど、どうやって知ったのだろう。


シェイルナータの名演技も形無しではないか。


同盟軍はどこまで知っている?


(ランはやっぱり行くべきじゃないんじゃ……)


マトは不安になって、隣りを走る蘭を見た。


彼女の方は瞳に強い意志の光を浮かべて、息も切らさず、一心不乱に走っている。


まだまだ知らないことが多いからか、事の重大さが言うほどには理解できていないのか。


いずれにせよ、彼女の足は止まりそうになかった。


ようやくジャングルを抜けるとそこはもう集落の敷地の中だった。


火も煙も、いまだおさまってはいない。


「ひどい……」


戦争の生々しい爪痕が村中にあった。


「ひどい……」


その言葉しか出てこなかった。


「ラン、顔が真っ青だぞ。大丈夫か?」


「うん……平気」


本当は吐き気で胸がむかむかしていた。


これ以上マトに余計な気を遣わせたくなかったのだ。


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