久遠の絆
それを後押しするように村人から次々と声が上がった。


「ばばさまを連れて行かないでください!」


「そのお方は薬草で病気を治してくださるんだ!」


ばばさまがいなくなったら困るんだ!


しかしシド・フォーンはその訴えを一笑に付したのだった。


その場にいたものは皆、冷酷無比と言われる彼の、そのような姿を見たような気がしていた。


「さあ、参りましょう。共に世界を救うために」


シドはそう言ってナイルターシャの手を引いて行こうとしている。


マトが飛び出した。


その脇を別の影が走る。


そしてナイルターシャを守るように、彼女とシドの間に割って入った。


「待って!世界を救うのは、わたしの役目よっ!」


シドはその漆黒の瞳を瞬かせたものの、すぐに合点がいったようにナイルターシャを離した。


「大丈夫ですか?」


老女を支えると、

「どうして来たのです?」

と、まるで助けたことわ責めるように言ったのだった。


「なぜって、助けたかったからです」


「あなたにはあなたの役目が……」


ナイルターシャはそう言って、瑠璃の石の指輪を撫でた。


「世界を救うのがわたしの役目なら、ひとりを助けるのも役目です」


そして出来ることなら、戦火におびえる人すべてを助けたい。


「……」


蘭の言葉を聞きながら、ナイルターシャは無言で指輪を撫で続けている。


否定も、肯定もなかった。


(わたしの考え、間違ってる?)


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