久遠の絆
◇◇◇



なんとかあの場所に行きたい。


シド・フォーンの隠れ家に。



蘭の中で、どんどんその気持ちが強くなっていく。


でもヘラルドが怖かった。


そしてさらに、部屋は施錠されてしまっている。


あの夜以来、また蘭は軟禁状態にあった。


部屋から出られるのはナイルターシャノの元へ行く時だけ。


それもリリカがぴたりと付き添っているから、本当に自分の部屋とナイルターシャの小屋とを往復するだけの生活だった。


蘭が部屋を抜け出して東屋のあった場所に行った時、リリカにも何らかの制裁が加えられた形跡がある。


次の日、リリカは普段通り働いているようではあったけれど、よく見れば時折痛そうに顔を歪めることがあったのだ。


(ヘラルドはほんとに恐ろしい人だ)


逆らって無理矢理にでも何かすれば、自分だけでなくリリカにも被害が及ぶだろう。


(意志を持つのはわたしでなくてもいいって思ってる人だもの。きっと考えられないような酷いことされるわ)


命にも危険が及ぶような。


それくらい平気な顔でやってしまいそうだった。


だから、蘭は動けない。


動きたくても、動けなかった。


「どうしたらいいと思う?」


最近では普通のことになってきた、石との会話。


何気なくやってしまう。


蘭の問いかけに、瑠璃の石はちかちかと瞬いた。


「こうしている間にも、シドさん、寂しがってるかもしれない」


『傍にいて』と言った時の彼の表情が忘れられなかった。


なんとか彼に会って話がしたかった。




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