久遠の絆
「帝国のものと、共に歩む?」


力強くうなずく蘭を、シドは呆然と見つめ返している。


そんなこと考えたこともないのだろう。


でも。


彼が『側にいて』とすがるように見た目を忘れられないから。


そして帝国の人たちを敵じゃなく、もう一度仲間だと思って欲しいから。


蘭は懸命に言葉を選んで言った。


「肉親に辛く当たられるほど悲しいことはないけれど、でもその分親身になってくれる人達がいます。この世界に来て、わたしは初めてそれを知りました。
おこがましいかもしれないけど……。」


そこで蘭は一旦言葉を切り、シドを見つめた。


思いが伝わるように。


「わたしと友達になってください」


眉を寄せるシドの反応に、蘭は体中から汗が吹き出した。


(やっぱり無理なのかな?伝わらないのかな、シド・フォーンには……)


不意にシドが立ち上がった。


蘭は怒られるのかと、びくりとして目を閉じた。


けれど彼は思いのほか優しい声で言ったのだ。


シドがそんな声を出すなんて、蘭は一瞬また彼がもうひとつの人格と入れ代わったのかと思った。


しかしそうではないらしい。


彼の瞳の強く鋭い光は変わることなく、声だけは優しく彼は言ったのだ。


「何故、俺のことをそこまで?」


蘭はどきどきしながら答えた。


「それは……本当にシドさんともっと仲良くなりたいって思ってるから。それに」


「それに?」


「シドさんの病気を治したい」


「俺の病気?」


シドの怪訝な表情に、蘭は告げるべきか迷った。


でもここで挫たら、きっとシドのためにならない。


自分の病気のことを自分自身が知らないなんて、やっぱり不自然だから。


< 367 / 810 >

この作品をシェア

pagetop