久遠の絆
「じゃ、またな」


「あ、あのシドさん!」


まだ別れがたくて呼び止めると、シドは扉のノブに手を掛けたまま、

「俺のことはシドでいい」

と言った。


「え?」


「友達になるなら、さん付けなんておかしいだろ?」


そう言って、シドは今まで見たこともないくらいの爽やかな笑顔で出て行った。


誰もいなくなった部屋の中で、蘭はどっと疲れを感じてソファに座りこんだ。


「はあ~」


長い溜息をついて、今の会話を反芻する。


(何か最後の方、すごく恋の告白めいたことを口にしたような気もするけれど、まあいいか)


ともあれ彼の友達になれるらしいのだから、とりあえずは成功と言ったところだろうか。


(これで彼の病気が徐々に良くなってくれればいいんだけど……)


カイゼライトに少し良い報告ができそうな気がして、蘭はほっとした。


しかしこのことをヘラルドが知れば、きっと大変なことになるだろうけど。


それは今考えても仕方ないことだった。


(次にシドに会えるのはいつかなあ?)

と思いつつ、蘭も隠れ家を後にした。





















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