久遠の絆
調印式は滞りなく行われ、その後少しの休憩を挟んで、晩餐会が開かれた。
蘭はいつものゆったりとした服装を着替え、帝国風のかっちりとしたドレスを身にまとった。
フリルや宝石で飾られたきらびやかなドレス。
(わたしにはまったく似合わないよ……)
鏡に映った自分に愕然としながら、蘭は晩餐会が行われる大広間へと向かった。
しかし意識は次第に衣装よりも、これから会うカイルの方へと移っていった。
自然速まる足をドレスの裾に取られながら、大広間へと向かう。
一歩、一歩、カイルに近付いていく。
夢にまで見た人に会える。
ドキドキする胸をどうすることもできずに、蘭は足を急がせた。
大広間に着くと、そこは議事堂とは打って変わって明るい照明に照らされた場所だった。
蘭と同じようなドレスを纏った女性たちが、軍服の男性にエスコートされながら、囁くように会話を交わしている。
(テレビみたい……)
蘭はすっかりその場の雰囲気に圧倒されていた。
それは普通に生きていれば決して立ち会うことのない場で。
自分が今いかに非日常を過ごしているのかを、蘭ははっきりと感じてしまった。
「蘭」
呼ばれて我に帰ると、シドが手を差し出している。
「え?」
「お前の相手は俺だろう?」
そう言って、シドは少し強引に蘭の手を取った。
そのままシドは大広間の中央に向かって歩いて行く。
彼の登場に気付いた人々が、一様に会釈した。
それに応えながら、シドは滅多に他人には見せることのない微笑みを湛えている。
(機嫌いいのかな)
蘭はシドに手をひかれながら、そんなことを思っていた。