久遠の絆
広間の中央に、輝く人がいる。


シャンデリアに照らされた黄金の髪だけでなく、その身に纏う雰囲気まで眩しい人。


(カイル……)


数人の女性に囲まれている彼は、まだ蘭に気付かない。


女性たちは皆うっとりと頬を紅潮させ、彼の優雅な仕草すべてに胸を高鳴らせているようだ。


「相変わらずだな」


シドがぼそりと呟いた。


「え?」


「いや、なんでもない」


でも蘭はシドの言いたいことが何か、なんとなく分かってしまった。


カイルは昔も今も変わらず、女性たちの憧れなのだ。


そう思ってしまうと、自分なんかあの女性たちにすら及ばないほど、カイルから遠い存在のように思えてくる。


いくら近付いたと思えても、それは錯覚にしか過ぎないんじゃないか。


蘭はきゅっとドレスのスカートを掴んだ。


「お話が弾んでいるところを申し訳ない」


シドが珍しく遠慮がちにカイルの背中に話しかけた。


カイルはゆっくりと振り向いた。


二人の視線がぶつかり合う。


「こちらの御令嬢に少し時間を頂けるかな?」


(ご、御令嬢?)


蘭の戸惑いを知ってか知らずか、シドは丁寧な所作で蘭をカイルの正面へと促した。


女性たちの視線もすべて彼女へと向けられ、蘭の全身から恥ずかしさと緊張で変な汗が噴き出した。


女性たちは何やらこそこそ耳打ちをし合っていたけれど、シドの「席を外してくれ」と言うひと言で、蜘蛛の子を散らすように行ってしまった。


「じゃあ、あまり時間はないが、な」


そう言って、シド自身も蘭の傍から離れて行く。

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