久遠の絆
「あなたがジャングルで消息を絶った時。私はあなたにこの運命を負わせたことを後悔しました」


「カイル、わたしは……!」


「しかし、こうしてガルーダでも厚遇されておられるのを実際に見て、安心していたところなのですよ」


「う、うん。シドは良くしてくれるよ。大丈夫だよ。
わたしはわたしのやらなきゃならないことに、やっと自信が持て始めたの。ジャングルで連れ去られて、こうしてここに来たのも偶然じゃないんじゃないかって最近思うし……。だからね、だからカイル……」


自分のこと、責めないで。


蘭はありったけの思いを込めて彼を見た。


やっと、やっと、彼をまともに見た。


それを受け止めるように、カイルも真っ直ぐに蘭を見返している。


でも。


二人の間には、届きそうで届かない、交わりそうで交わらない、微妙なずれがあった。


(なんでだろ。こんなに近くにいるのに、すごくカイルが遠い……)


手を伸ばせば触れ合える距離だというのに。


「安心しました」


「え?」


「もし、ここで蘭さまが虐げられておられるなら、力づくでも連れ帰ろうと思っていたのですが。しかし今は帝国におられるよりも、ここにいたほうが安全でしょう。このままガルーダに残っていただけますか?」


「……」


蘭の胸がずきりと痛んだ。


カイルに突き放された。


そんな風に感じた。


彼女とて、今帝国に戻っても、瑠璃の巫女としての仕事ができるとは思っていない。


けれどカイルは、蘭を取り返そうとしてくれるものと思い込んでいた。


だから彼の、表面上は前と変わらず温かく接してくれる中での、その冷たく突き放すような言葉に傷ついた。


「カイル……わたしは、あなたと会いたくて、すごく会いたくて、帝国に連れて帰ってくれるなら、あなたの傍にいてもいいなら、そうしたい……」


無理だと分かっているのに、そう言っていた。


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