久遠の絆
その言葉を聞いて、カイルは半ば目を伏せた。


また、ふたりの距離が開く。


蘭はそんな錯覚を覚えていた。


「蘭さまはここにいた方がいい」


「……」


「ここの方が安全です。帝国はとても不安定な状態ですから」


「それでも、カイルの傍にいたいって言ったら?」


カイルはつと顔を上げた。


「蘭さまをあえて、滅亡するかどうかの瀬戸際にある国にお連れすることはできません。蘭さまはこの世界にとって、もっとも大切な方なのですから」


「カイルはどうなのっ?!」


蘭は思わず叫んでいた。


瞠目するカイルに構わず、言葉を続けた。


「世界を救うのはもちろんわたしの役目だって分かってる。でも、カイルは?カイル自身は、わたしのこと、どう思っているの?!」


蘭の心からの叫びを受け止めたカイルは、片手で口を覆い、苦しげに瞼を閉じた。


必死に自分の中の何かの感情を抑えているようだった。


「カイル?」


思わぬ反応に不安になって声を掛けると、彼は視線をそらせたまま、


「蘭さまは、この世界を救ってくださる大切な方です。蘭さまをこの世界にお連れした責任が、私にはある。だが今は、蘭さまをお守りできる状態ではありません。だから蘭さまには安全な場所にいて頂きたいのです」


「……」


「どうか、このガルーダで、健やかにお過ごしくださいますよう」


蘭の頬をひとすじ伝うものがあった。


それにカイルは気付かないふりをして踵を返す。


その背中に、蘭は涙声で問いかけた。


「婚約するって、本当?」


カイルが肩を震わせ、歩みを止めた。

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