久遠の絆
◇◇◇





カイルの元から逃げて、そのまま自室に閉じこもった蘭は、シドが再三訪れたことも、帝国艦隊が早々に帰国の途に着いたことも知らずにいた。


ベッドに突っ伏したまま、丸2日食事を取っていない。


リリカが心配して声を掛けても反応しなかった。


眠っているのではない。


自分と自分以外のすべてとを、完全に遮断しているのだった。


今の蘭には。


瑠璃の巫女として世界を救うことも。


ナイルターシャのことも。


シドのことも。


何もかもがどうでもよく、ただひとつ、カイルという心の支えを無くしてしまったことだけで占められていた。


他の、自分ではない誰かが、カイルの最も大切な人になる。


そんなこと、心のどこかでは分かっていた。


あの、カイルを取り囲んでいた女性たちを見た時に感じた疎外感。


結局はそういうことなんだと。


自分なんて異世界の人間に過ぎないんだと。


分かっていた。


その上で、彼はこの世界で一番信頼する、かけがえのない人だった。


それなのに、失ってしまった。


(失ったんだ……)


そうはっきりと意識した時、蘭はくるりと寝返りを打ち、仰向けになった。


瞼は閉じたままだ。


今にもズブズブとベッドの中に沈み込んでしまいそうだった。


それだけ無気力になっていた。


(カイルが結婚するっていうだけで……)


自分の弱さが嫌になる。


シドは強いって言ってくれたけど、そんなことはまったくない。


(わたしはほんとに弱いよ)




もう、どうでもいい


全部、どうなってもかまわない


わたしは

こうやって何もしないで、じっとしていたいんだ


だって、そうすれば、


もう傷付かないでいいんだもの……

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