久遠の絆
アニーシャはカイルと兄とを交互に見つめた。


そして。


「わたくしだって、分かってる……皇女として、今何をすべきなのか。どう動けばいいのか。そんなこと、とっくに分かってる。カイルとの結婚が心底嫌なわけではないの。ただ……もっと他の道がないかって、そう思うのよ」


「他の道?」


「ええ、そうよ。兄さま。カイルが皇帝にならなくても、帝国が存続する方法は何かないのかしら」


「ないね」


「そう?」


「ああ、帝国が帝国であるためには皇帝がいなくては始まらないよ。そのためにはカイルが帝位に就かなくては、他に適任者はいないだろう?それともアニーシャは、カイル以外の男が夫になってもいいのかい?」


「……それは、すごく嫌だけど……」


「そうだろう?皇女としての責任を含め、君は決断しなくてはいけない。カイルとの結婚をね」


「……」


そして、アニーシャは。


「もう少し考えさせて」

という言葉と共に退室していった。










「少し、強引過ぎるのではないでしょうか?アニーシャさまが嫌がられるお気持ちはよく分かります。本当に結婚することなく帝国が存続する方法があるなら、それを検討するべきではないでしょうか」


カイルとて、心が揺れているのだ。


アニーシャはまだ幼い。


そして、皇族としての自覚にも欠ける。


この世界の情勢を正確に把握しているかどうかも分からなかった。


そのような少女に犠牲を訴えかけても、難しいのは目に見えている。


彼女には世界に対する責任感など皆無なのだから。


それに。
 

やはり結婚は、女性にとっては人生の重大事項であることは明らかなのだから。


「あのように嫌がられているアニーシャさまに、これ以上強要するのも申し訳ないことです。何かよい方法がないか、考えてみましょう」

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