久遠の絆
南の大陸に横たわる山脈。


その南側には広大な砂漠が広がる。


山脈の北側は雪景色であっても、こちらは常に不毛の大地であった。


この季節、強い風に砂が巻き上げられ、砂嵐が起こる。


そうなると視界は極端に悪くなり、人の移動は困難となる。


加えて、全身を覆う衣を身に着けないと、砂が服の中にまで入り込み、呼吸すらまともに出来なくなるから厄介だ。


頭の先から、顔、足の先まで、一枚の長い衣を纏う。


これが、この辺りの民族衣装となっていた。








この日も、その視界の極端に悪い中を、一頭の白馬が走っていた。


砂漠のきわを通るようにして作られた街道を、山脈とは逆、つまり南の方に向かって走っている。


その馬にまたがる人物もまた、一枚の布で作られた長衣を纏っていた。


首元にはスカーフを巻き、さらに衣の中に砂が入り込まないようにしているらしい。


そのスカーフが馬のスピードに乗って、ひらひらと揺れている。


厳しい環境を物ともしていないような、優雅な乗馬だった。


白馬はさらに南へ南へと街道を下って行った。


山脈が遠のき、いよいよ砂漠のみの風景となってきた時、彼の前方に岩山が現れた。


緑深き山脈と違い、こちらは本当に岩だけの荒涼とした山だった。


ごつごつとした岩に足を取られないように、馬は速度を落とし、慎重に歩を進めて行った。


馬上の人は手馴れた様子で馬を操る。


この辺りの地形を熟知しているようだった。


その岩山を大きく回りこむと、洞穴の入り口がぽっかりと口を開けていた。


それは奥の方までずっと続いているのだろう。


吸い込まれそうな闇が入り口から見えていた。


白馬はその洞穴の前まで来ると一度ぶるると鼻を鳴らし、そのまま躊躇なく穴の中へと入って行った。


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