久遠の絆
カイゼライトの言葉に、シドは一瞬瞼を閉じた。


そして開かれた漆黒の瞳には、もう迷いの色はなく。


「無事でいろよ、兄貴」


「ああ、生きてあの子に会おう」


カイゼライトも微笑みながら答えた。


ようやく向き合えた兄弟だから。


これを今生の別れなどにはしたくない。


生きて、必ず会おう。


その時。


「シド・フォーン、行かせんぞ!」


海賊と揉み合う中から隙を突いて、兵士がひとりこちらに銃を向けた。


「行け、シド!」


カイゼライトが叫び、ランデルが吹き矢をその兵士に向けた。


シドはコックピットに乗り込み、操縦桿を握ると、すぐさま出力を上げた。


そして動き出す飛行艇。


もうこうなれば、迷うことなどない。


信じればいいのだ。


カイゼライトの言葉を。


再び会うことを約した、兄のことを。


そしてシドの乗る飛行艇は飛び立った。


進路は南。


爆音響く海域はやがて遠のき、飛行艇はただひたすら、雲一つない空を飛んで行った。



















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