久遠の絆
「ふふふ。覚えてるかい?」


「も、もちろん覚えてますよ。なんでシェイルナータさまがここに?!」


「いや。ちょっと用事を済ませに出たついでに、お前さんの顔でも見ておこうかと思ってね」


「よ、用事を済ませにって、シェイルナータさま、あそこから出られないんじゃ」


「思念体だからさ。本体はあっちにいるよ」


「思念体……」


「この部屋も今は結界の中。同じようでいて、同じではない。誰もここには入って来られない。私とお前さんだけで、ゆっくり話が出来る」


「……」


「私の切ない恋話を聞いただろう?」


「……」


「ふ……それで、お前さんは裏切られたと思ったかい?」


「……」


「頷いたね。だがね。私はお前さんを裏切ったことはないよ。何故なら、私はずうっとヘラルドの味方だからさ」


「!」


「こんなことを言えば、お前さんに恨まれるかねぇ、まあ、それを承知で言うがね」


「もしかして」


「ん、何だい?」


「もしかして、わたしをジャングルに行かせたのも、最初からヘラルドに会わせるため?」


「ほう、お前さんにしては察しがいいね。そうさ。瑠璃の巫女を壊したいって言うのが、ヘラルドの目的だったからね。上手くいくと思ったんだが、お前さんはこうしてピンピンしている」


そう言うと、シェイルナータは至極残念そうに溜め息を吐いた。


「そんな。どうして……」


「ヘラルドの目指していることは知っているだろう?あの人はこの世界の、そして宇宙の崩壊を望んでいる。けれど瑠璃の巫女がいる限りは、宇宙が救われる可能性もある。だからね。お前さんに負の感情を纏わせて、瑠璃の石を使い物にならなくさせたかったんだよ。それはどうやら、そのようになっているようだね」


シェイルナータは黒く澱んだ瑠璃の石を見ている。


それに気付いた蘭は、その視線から隠すために、瑠璃の石を右手で覆った。


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