久遠の絆
「でも、シド。守護者になんてなっちゃったから、どうするの?」


「俺はもちろんお前と行くから、グレンに一任だな」


「いいの?」


「仕方ない。ヘラルドとどんな形で戦うことになるのか。いずれにせよ、一度は相見えることになるだろう。奴がすべての黒幕ならね」


シドはすでに幾通りもの戦略を考えているのか。


漠然としか捉えられていない蘭には、シドが随分大人に思えた。


年齢では5つしか離れていないのに。


経験してきたことや知識の豊富さは、蘭など彼の足元にも及ばないのだ。


「巫女姫の村に行って、そこで何をすればいいのか。イーファンは何か言った?」


「ううん。まだ、何も」


「そっか。彼も具体的には知らないのかもな」


「そうだね」


彼が守護者としての仕事をする前に、彼の瑠璃の巫女は命を断ったのだから。


そう思うと、イーファンも可哀相な人だと思おう。


恋を絶頂で摘み取られ、シャルティに会うまで、何百年も孤独の中で生きてきたのだから。


書面を見せてもらっても、シドの書いた文章は難しくて、まったく理解できないでいる蘭は、思考が別の方へとずれていく。


「お前、読んでないだろ」


「え、ば、ばれた?だって、難しいんだもん」


「ふ……まあいいさ。どっちみち、お前には関係ないことだ」


シドはそう言うと、紙をくるくると丸め紐で縛った。


「あとは、グレンにお任せ」


「うん……」





どうか、誰も傷付きませんように。





今は戦いしか選択肢はない。


それは分かるけれど。


蘭は皆が無事に再会できるように、願わずにはいられなかった。



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