久遠の絆
◇◇◇






食堂のテーブルに置かれた図面を取り囲むようにして、皆が立っている。


その輪の中心にいるのは、シドだった。


一つ一つの項目を確認しながら、考えた作戦を伝えている。


「生憎俺は行けなくなったから、戦艦の総指揮はゲルシュ・グレン。補佐にシャルティが付いてくれ」


「了解」


「後の動きはゲルシュ・グレンに任せるが、二隻の戦艦で同盟軍に太刀打ちしようって言うのには、ちょっと無理がある。そこで、だ」


「奪やあいいんだろ?あちらさんの戦艦をよ」


「そういうこと」


「奪う?どうやって?!」


非難の声など、当然予想していた反応だったのだろう。


シドはにやりと笑うと、「出来るさ。案外簡単にね」と余裕ありげに言ったのだ。


「簡単だと?」


シャルティは眉をひそめた。


「現在同盟軍の主力はダンドラークにある。南の同盟各国にいるのは、留守番部隊だ。精鋭はほとんど北にいると言っていい。こちらにとっては、好都合だろう?」


「……確かに、そうだが」


「奇襲は九割方成功するだろう。グレン、やれるな」


「任せろや」


「最初のターゲットは、ガルーダだ」


「ガルーダ?!」


シャルティは唖然とした。


ガルーダはもっとも避けるべき場所ではないか。


「そう、ガルーダだ。ヘラルドにとっては、もはや過去の地。眼中にはないだろう。すでに、捨てられた場所だ」


「確かに、そうだったよ。俺とマヤが行った時も、閑散としてた」


マトは人気のまったくない、白亜の屋敷を思い出していた。


「出来れば、ナイルターシャも収容してくれ」


「ナイルターシャさま……」


蘭が心配そうに唇を噛むのを慰めるように、マトが肩を抱く。


それをひと睨みしてから、シドがカイルに視線を移した。


「そろそろ、あんたんとこの人間も集まっただろう?」


シドが確認するようにカイルを見た。




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