久遠の絆
カイゼライトはそのまま主都へ直行する。


「首都を撃つ」


他の将校へ、映像通信を使って命じると、当然反論されたが、カイゼライトは全速力のまま艦を走らせた。


「カイゼライト君、越権行為だ!」


「元々寄せ集めの部隊です。命令系統が定まらなくても、仕方ないでしょう。先に失礼しますよ」


「君は皇帝になりたいのか?!」


通信を切る前に、将校が声を上ずらせながら言った言葉が気になった。


誰が首都に辿り着いても、その者が次の統治者になる訳ではない筈なのに。


将校たちの間に、そう言った誤解があるのかも知れなかった。


「覇権だの、何だのと言っている場合ではないんだ」


「当事者以外は、暢気であるということですかな」


瑠璃の巫女に関する事を知っているカイゼライトとは、やはり心構えからして違うのだろうか。


「まあ、いいさ。ヘラルドがいつ仕掛けてくるかも分からない。心しておけ」


「御意」


さながら皇帝に拝するような仰々しさで会釈するランデル。


「よせよ」


カイゼライトは苦笑した。


「お血筋から言えば、カイゼライトさまが皇帝に即位されても、何ら問題はございませんが」


「よせって。無駄口は、終わりだ」


カイゼライトが前を向いてしまったのに、ランデルは不満げに口をしぼめた。


案外冗談ではなく、本気でカイゼライトをけしかけていたのかも知れない。


だが、当然カイゼライトにその気はなく。


ただ一心に前を見据えていた。





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