久遠の絆
「いやっほーい!海賊の力、みくびんなよー!」


艦橋に海賊の旗をくくり付け、船長が命じた。


「カイゼライトを追う。全速前進!」


同盟軍の戦艦の操縦法は、先に奪取した海用母艦で経験済みだ。


粒子砲搭載艦といっても、違いはなかった。


加えて、この艦のほとんどの下士官が、抵抗することなく投降したことも大きかった。


皆、ヘラルドのやり方に不満を抱いている。


そう思える出来事だった。


「あんたらも苦労してんだな」


船長は、副艦長であった男に声を掛けた。


「我々はシド・フォーン総帥の為に働いて来たんだ。ヘラルドではない。奴は、罪深い簒奪者だ」


「シド・フォーンが好きかい?」


「あの方こそ、我々の本物の統治者だ」


「ふーん。じゃあ、シドの兄貴にも、しっかり協力してやってくれよ」


「その方は本当に総帥の兄上なのか?」


「じゃあ、今から通信繋いでみろよ」


そして、カイゼライトもまた、シドと同じ信奉を得ることとなる。


高密度粒子砲を手にした、カイゼライト。


この先の戦闘は、いよいよ混迷の度を深めて行くのだった。









「海賊たちがやってくれたよ」


「お使いになるのですか?あの恐ろしい兵器を」


「……分からない。だが、敵の手の内にあるよりはいいだろう?」


「他にも数艦あるとのことですが?」


「ふふ。お前はどうも私を追い詰めたいらしい。私はもう引き返せないところまで来ているんだ。決断するさ。その時が来ればね。虐殺の大罪を犯すことになっても」


「……私のカイゼライトさまに、そのような罪を負わせるわけには」


「迷うな、ランデル。シドならば、迷うまい」


「……は……」


世捨て人のようであった主が、その瞳に強い意志を持って前を見ている。


ランデルはそのことを喜ばしいと思いこそすれ、もっと違った場面であったならと思わないではいられなかった。




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