久遠の絆
『シドではないな』


「シドでなくて、悪かったな」


赤い石から発せられる閃光を、持ち前の俊敏さで避けながら、徐々にヘラルドに近付いて行く。


そして、あと一歩でヘラルドという所で銃声が響いた。


驚愕に見える片目を見開き、前に倒れるヘラルド。


何が起こったのか、一瞬で理解したシャルティは、ヘラルドの向こうに立つ人を見た。


その人は軍服を着ていた。


「あなたは?」


「私は帝国軍少将ハウレンと言います」


『ぐっ……どういうことだ』


ヘラルドは、背中からドクドクと血を流しながら立ち上がった。


「あなたが皇宮を攻撃されているのを見て勇気を得た市民が、一斉に蜂起したのです。シェルターに幽閉されていた、皇帝陛下並びに皇女殿下、捕われていた貴族たちも、市民によって解放されました」


『何だと?』


「という訳だ。ヘラルド。やっぱ悪いことは出来ないぜ」


両側から銃口を向けられたヘラルドは、観念したかに見えた。


だが。


ボッという音と共に、ヘラルドは赤い炎のようなものに包まれたのだ。


「なに?!」


『貴様らごときにやられる私ではないわ。いいだろう。私を追い詰めた罪は重い。
貴様らの希望など、根こそぎ断ってやる』


「何だと?」


シャルティが問い詰めようとした瞬間、炎に包まれたヘラルドの姿がふっと消えた。


「あっ」


「消えた?!」


シャルティとハウレン少将は顔を見合わせた。


「希望を根こそぎ断つとは、どういう意味でしょう」


「……まさか、蘭?!」


シャルティは駆け出した。


しかし、この後シャルティは、蜂起して皇宮を取り囲んだ市民に、ヘラルドを追い出した“英雄”として担ぎ上げられることになる。


彼はアトゥマ創設の理念を果たしてしまったのだ。


それは、望んだ形とはまったく違っていたけれど。


蘭たちのことを気にしながら、彼はもみくちゃにされていた。







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