久遠の絆
月のない夜だった。


頭上に幾千もの星が瞬く前線。


戦闘は一時停止し、静かだった。


同盟軍の圧倒的勝利かと思われた矢先、その艦隊は突然海上へと後退したのだ。


そこでぴくりと動かなくなり、今に至る。


ゲルシュ・グレンは旗艦の管制室に仁王立ちし、じっと何も映し出されていないスクリーンを見つめていた。


もう日付が変わりそうな時間だった。


「シドの野郎、何考えてやがんだ?」


これじゃおちおち眠れやしない。


「あの船……」


いつの間に開発していたのだろうか。


「帝国から持ち出した兵器じゃ、飽き足らなかったって訳か」


手強いな。


背中をむずむずと這い回る、悪寒の様なものをずっと感じていた。


「胸くそ悪いんだよ」


この静けさがまた嫌だった。


あの船にシドは乗っているのか?


そう思う一方で、そうではないと否定する自分がいた。


シドは別な場所でこの戦闘を傍観している。


「高見の見物、か」


恐らくはそうなのだろう。


「お偉いさんになったもんだな、シドよ」


戦闘が再開されるのは、夜明けか?


いずれにせよ、今夜は眠れそうになかった。


「いくら俺の神経が図太いって言っても、ね」


けれど、この身がぼろぼろになっても、カイルっちの期待に応えなけりゃいけないんだ。


あの、帝国を誰よりも愛す、若き元帥のために……。

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