久遠の絆
「洗礼……」
カイルが去ってしばらくしてから、蘭は口の中で小さく反芻した。
宗教の洗礼?
と言うことは改宗するということなのかな……。
ダンドラークの神さまに?
まあ、だからといって特に感慨があるわけでもないんだけど。
法華宗ではあっても、仏も神も信じてはいないのだから。
洗礼を受ければ、わたしは本当にこの世界の人間になったと認められる。
そういう意味なのだろう、と蘭は勝手に理解した。
「蘭さま?」
お茶のおかわりを差し出しながら、アンが気遣わしげな表情で見ていた。
「ううん、なんでもない」
安心させるように笑顔を作り、お茶を口にする。
あの日、アンの胸で眠ってしまってから、蘭はこの献身的な侍女頭に随分心を開いていた。
めったと他人に打ち解けることのない彼女にしては珍しいことだった。
「ねえ、洗礼って、みんな受けるものなの?」
蘭のなかでは、教会で神父から聖水を掛けられ、名前を授けられる、そんなイメージだった。
アンはしかしきょとんとして小首を傾げ、
「いいえ、そのようなことはございません」
ときっぱり否定したのだ。
「あ、そうなんだ……」
「やはり蘭さまは異世界から来られた特別なお方。もし万が一にも災いの降りかかるようなことがあってはいけませんから、神のご加護を強いものにするためにも、そのようなことが必要だと神殿がお考えになったのではありませんか?」
アンの言うことは納得できるものではあった。
カイルが去ってしばらくしてから、蘭は口の中で小さく反芻した。
宗教の洗礼?
と言うことは改宗するということなのかな……。
ダンドラークの神さまに?
まあ、だからといって特に感慨があるわけでもないんだけど。
法華宗ではあっても、仏も神も信じてはいないのだから。
洗礼を受ければ、わたしは本当にこの世界の人間になったと認められる。
そういう意味なのだろう、と蘭は勝手に理解した。
「蘭さま?」
お茶のおかわりを差し出しながら、アンが気遣わしげな表情で見ていた。
「ううん、なんでもない」
安心させるように笑顔を作り、お茶を口にする。
あの日、アンの胸で眠ってしまってから、蘭はこの献身的な侍女頭に随分心を開いていた。
めったと他人に打ち解けることのない彼女にしては珍しいことだった。
「ねえ、洗礼って、みんな受けるものなの?」
蘭のなかでは、教会で神父から聖水を掛けられ、名前を授けられる、そんなイメージだった。
アンはしかしきょとんとして小首を傾げ、
「いいえ、そのようなことはございません」
ときっぱり否定したのだ。
「あ、そうなんだ……」
「やはり蘭さまは異世界から来られた特別なお方。もし万が一にも災いの降りかかるようなことがあってはいけませんから、神のご加護を強いものにするためにも、そのようなことが必要だと神殿がお考えになったのではありませんか?」
アンの言うことは納得できるものではあった。