久遠の絆
ニアスは心配そうに蘭を見たまま、その場を動こうとはしなかった。
「ニアス、もう大丈夫だよ?」
「はい……ですが、蘭さま。」
「?」
「お顔の色が優れませんよ」
蘭は思わず頬に手をやった。
「きっと、部屋に明かりがないからだわ。薄暗いから、顔色も悪く見えるのよ」
ニアスを安心させるために言ったことだったが、その言葉は暗示のように蘭自身も納得させてしまうのだった。
「明るさのせいばかりだとは思えません。ご無理なさらないで下さい。
カイルさまに申し上げて、洗礼の日をずらして頂きましょう」
本当にそんなことができるなら、そうしてほしいところだったが、今までの雰囲気からして、日程をずらすことなどとても無理なことに思われた。
何より。
「あちらの世界での穢れを落としたいのよ」
ニアスは不思議そうな顔をした。
蘭の言う意味がよく掴めないようだ。
「カイルはこの洗礼で、わたしの穢れを落とすって言ってたわ。だから、わたしは洗礼を受けることをイヤだとは思っていないのよ」
「まるで、蘭さまが穢れているみたいな言い方ですね」
なおも彼は怪訝そうな表情を崩そうとしない。
けれど蘭はすっくと立ち上がり、「さ、着替えをするから、ニアスも出ててね」と努め
て明るく言った。
立ち上がった時にふらついたことを気取られないように気をつけながら。
そう言われてしまえば、ニアスもこれ以上ここに留まることがためらわれるのか、言を重ねることを自分に戒めるように口を真一文字に結び、深々と頭を下げてから退室して行った。
力が抜けたようにまた椅子に腰掛ると、ホーと深い溜息が漏れた。
答えの見えない迷路に迷い込んだような緊張感で、すでに疲労を感じていた。
「着替えなきゃね」
「ニアス、もう大丈夫だよ?」
「はい……ですが、蘭さま。」
「?」
「お顔の色が優れませんよ」
蘭は思わず頬に手をやった。
「きっと、部屋に明かりがないからだわ。薄暗いから、顔色も悪く見えるのよ」
ニアスを安心させるために言ったことだったが、その言葉は暗示のように蘭自身も納得させてしまうのだった。
「明るさのせいばかりだとは思えません。ご無理なさらないで下さい。
カイルさまに申し上げて、洗礼の日をずらして頂きましょう」
本当にそんなことができるなら、そうしてほしいところだったが、今までの雰囲気からして、日程をずらすことなどとても無理なことに思われた。
何より。
「あちらの世界での穢れを落としたいのよ」
ニアスは不思議そうな顔をした。
蘭の言う意味がよく掴めないようだ。
「カイルはこの洗礼で、わたしの穢れを落とすって言ってたわ。だから、わたしは洗礼を受けることをイヤだとは思っていないのよ」
「まるで、蘭さまが穢れているみたいな言い方ですね」
なおも彼は怪訝そうな表情を崩そうとしない。
けれど蘭はすっくと立ち上がり、「さ、着替えをするから、ニアスも出ててね」と努め
て明るく言った。
立ち上がった時にふらついたことを気取られないように気をつけながら。
そう言われてしまえば、ニアスもこれ以上ここに留まることがためらわれるのか、言を重ねることを自分に戒めるように口を真一文字に結び、深々と頭を下げてから退室して行った。
力が抜けたようにまた椅子に腰掛ると、ホーと深い溜息が漏れた。
答えの見えない迷路に迷い込んだような緊張感で、すでに疲労を感じていた。
「着替えなきゃね」