久遠の絆
するっとボタンが外れる。


ひとつ、またひとつ……。


彼女の胸が露わになる。


それでも蘭は抗うことなく、じっと相手の顔を見ていた。


いや、本当に見ていたのかは分からない。


目の焦点は合っておらず、とても虚ろだったから。


抗う術など知らないかのように、蘭はその場に立ち尽くしていた。


最後のボタンに手がかけられた。


そして彼は蘭の耳元に口を寄せ、囁いた。



「ラン……私の大切な子……」



その声に、その言葉に、その空気に。


蘭は囚われ、硬直した。


身動きひとつできず、その口が首元に口づけするのを感じていた。


そして、慈しむように抱きしめられる。


「お前は、私から逃れることはできないんだよ」


優しく囁かれた言葉に、蘭は体の力が抜けるのを感じた。


どこに行っても、この男はまとわりついて離れない。


呆然と目を見開いて闇を見つめながら感じていたのは、奈落に引きずり込まれるような
絶望だった。


彼女を抱く腕に力が入れられる。


でも。


「…い……や……」


蘭は搾り出すように声を出した。


「い…や……だっ……!」


蘭は強く言い放つと、密着する胸と胸の隙間に両手をねじ込んで、ぐいっと強い力で押
し返した。


男は、父親は、思わぬことに足をもつらせ闇の中に倒れ込んだ。


「わたしはもう、あんたの言いなりにはならないんだっ!」
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